2色成形に利用する樹脂材料の紹介

射出成形に利用する樹脂について

2色成形に限らず、射出成形には様々な樹脂材料を利用します。2色成形では樹脂同士に相性があるため配慮が必要になります。

樹脂はおおまかに分類すると以下のような分類をすることができます。

樹脂は大きく分類すると熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂があり、2色成形には通常、熱可塑性樹脂が用いられます。

その熱可塑性樹脂も硬質樹脂、軟質樹脂と分けることができます。特に軟質樹脂は熱可塑性エラストマーが該当し、熱可塑性エラストマーは常温では加硫ゴムのような性質を示しますが、高温では塑性流動が可能となり、プラスチックの加工機で成形できる高分子素材です。ゴムとプラスチックの中間のような特徴を数多く持っています。

熱可塑性の硬質樹脂の紹介

硬質樹脂には汎用プラスチックとエンジニアリングプラスチック(エンプラ)に分類される以下のようなものがあり、様々な特長を持っています。おおまかな特徴と用途は以下になります。

項目 通称 色見 特徴 主な用途
ポリエチレン PE-HD(高密度) 半透明 ①剛性・強度は密度(結晶化度)に依存して高くなる。②吸水率が非常に少ない。③成形収縮率が大きく、耐熱性もさほど高くないので構造用成形品には適さない。 ▼各種フィルム:食料品、医薬品、雑貨、機械工具等の産業資材包装用、農業用フィルムなど
PE-LD(低密度) 透明
ポリプロピレン PP 透明 ①加工性は、流動性がよく、薄物や複雑な形状物が成形できる。縦横の成形収縮率の差は小さく、バランスが良好。 ▼自動車:バンパ、フロントグリル   ▼家電製品:冷蔵庫、洗濯機
ポリスチレン PS 透明 ①剛性で透明性に優れる。②流動性、成形時の熱安定性が良好で、成形性に優れ、ポリマーの中で最も加工し易く、二次加工性も良好である。 ▼包装用:食品容器、乳酸菌飲料用容器  ▼電気工業用:エアコン、テレビ
ABS樹脂 ABS 不透明 ①引張り強さ、曲げ強さ、衝撃強さ、クリープ強さなどが優れている。②成形収縮率が小さい。③成形加工性に優れている。 ▼電気機器分野:冷蔵庫、洗濯機、掃除機、扇風機、テレビ、エアコン
アクリル樹脂、メタクリル樹脂 PMMA 透明 ①汎用の透明プラスチックの中では最も透明度が高い。高級感のある質感を持つ。②硬度が高く、透明性プラスチックの中で最も傷がつきにくい。③吸水性は比較的大きい ▼車両分野:テールランプ、サンバイザー、メーターカバー
ポリ塩化ビニル PVC(硬質) 透明~不透明 ①耐候性に優れている。②軟質PVCの耐スクラッチ性(耐キズつき性)はプラスチックの中で際立って優れている。 ▼硬質製品:パイプ、継手、シート   ▼軟質製品:レインコート、雨靴
PVC(軟質) 透明~不透明
ポリアミド PA(ナイロン6) 半透明~透明 ①融点が他の樹脂と比較すると高く、耐熱性に優れる。②機械的性質が優れ、強靭で、特に耐衝撃性に優れる。③充填材による補強効果が大きく、強化することによって機械的性質、耐熱変形性が飛躍的に向上する。 ▼自動分野:キャニスター、アームレスト▼電気分野:モノフィラメント、電線被膜
PA(ナイロン66) 半透明~透明
ポリアセタール POM(ホモポリマー) 不透明 ①摩擦、摩耗特性に優れ、自己潤滑性がある。②耐ガスホール(ガソリン/エタノール混合物)が良好であり、エコ燃料を使用する場合関連用途の拡大が期待される。 ▼自動分野:外板・外装・電装品    ▼電気分野:AV機器、駆動メカ部品
POM(コポリマー) 不透明
ポリカボネート PC 透明 ①プラスチックの中でも抜群の耐衝撃性を有している。②非晶性なので、耐摩擦性・摩耗性は良好ではない③耐候性は良好。 ▼電気分野:電子通信機器・照明器具
ポリブチレンテレフタレート PBT 白色 ①エステル基があるので加水分解により劣化する。②結晶化度が速いので成形サイクルが短い。③吸水率が小さいので、力学的性質等の変化は少なく、寸法安定性も良好である。 ▼自動分野:各種スイッチ類      ▼電気分野:コネクタ、プラグ、ソケット

 

また、各材料の詳細な性能は以下の表のようになっています。

 

◎・・・優れている、○・・・良好、△・・・あまり良くない、✕・・・劣る

(横にスクロールします)

項目 通称 加工性 強度 剛性 摩擦・摩耗性 耐衝撃性 耐薬品性 耐熱性 耐候性 比重 吸水率(%) 引張強さ(MPa) 引張伸び(%) 曲げ強さ(MPa) 圧縮強さ(MPa) アイゾット衝撃強さ(ノッチ付き)(J/m) ロックウェル硬さ 連続耐熱温度(℃) 荷重たわみ温度
(1.82MPa)
荷重たわみ温度
(0.45MPa)
ポリエチレン PE-HD(高密度) - - - - 0.94~0.97 0.01 20~33 8~10 38~60 19~25 5~200 D60~70 - - 60~82
PE-LD(低密度) - - - - 09.1~093 0.01 10~23 20 - - 破壊しない D41~50 - - 38~74
ポリプロピレン PP - 0.9~0.91 0.01 30~39 200~700 42~56 38~56 30~110 R85~110 121~160 - 93~110
ポリスチレン PS - - - 1.04~1.09 0.03~0.1 35~84 1.0~2.5 61~98 580~112 14~22 M65~80 60~77 - -
ABS樹脂 ABS - - 1.04 0.3 41 - 68 - 300 R102 - 89 98
アクリル樹脂、メタクリル樹脂 PMMA - - - - - - 1.2 0.4 77 10 120 126 27 M105 88 99 -
ポリ塩化ビニル PVC(硬質) - - - 1.35~1.45 0.07~0.4 35~63 - 70~112 56~91 20~1100 70~90(ショア) 66~79 54~74 -
PVC(軟質) - - - 1.16×1.35 0.15~0.75 10~24 - - 6~12 - 70~90(ショア) 66~79 - -
ポリアミド PA(ナイロン6) - - - 1.12~1.14 1.8 49~98 25~320 破壊しない 50~91 55~200 R103~118 79~121 52~75 149~185
PA(ナイロン66) - - - - - - 1.13~1.15 1.5 63~84 60~300 破壊しない 47~88 55~110 R108~118 82~149 66~86 183~243
ポリアセタール POM(ホモポリマー) - - - - 1.42 0.25 70 25 98 126 77 R120 91 124 -
POM(コポリマー) - - - - - - - - 1.41 0.22 62 60~75 2.6 112 65~90 M78~80 104 110 -
ポリカボネート PC - - 1.2 0.15 56~66 100~130 95 88 660~880 R118 122 130~140 -
ポリブチレンテレフタレート PBT - - - - - - 1.31 0.08 56 300 - - 50 R118 - 58 -

熱可塑性エラストマーの紹介

熱可塑性エラストマー:TPE は常温では加硫ゴムの性質(エラストマーとしての性質)を示しますが、高温では塑性流動が可能となり、プラスチックの加工機で成形できる高分子素材と定義されます。加熱により可塑性を示すエラストマーなので熱可塑性エラストマーと呼ばれます。TPEは、エラストマーとして加硫ゴムの性質を持っているが加硫を必要としない材料です。ゴムとプラスチックの中間的な特徴を数多く持っています。

以下は代表的な熱可塑性エラストマー(TPE)の特徴と主な用途になります。

項目 通称 特徴 主な用途
熱可塑性
(エラストマー)
ポリエステル系エラストマー TPEE ①ポリエステルの強靭な性質を有する。②耐荷重性が大きく強靭である。③繰返し疲労特性の優秀な数少ないTPEである。④コストが高い ▼自動車:エアダクトホース、ドアラッチ
▼家電:ホース、プロテクタ、パッキン
ポリウレタン系エラストマー TPU ①成形時の熱安定性が良く、再生使用が可能である。②消音効果、防振効果が大きい。 ▼自動車:ブーツ類、パネル、パッキン
▼家電:電線ケーブル被膜など
ポリアミド系エラストマー PAE ①ナイロンの強靭な性質を有する。②ナイロンと同様に実用的な成形加工性に優れている。③ゴム弾性がやや乏しい。④コストが高い。 ▼自動車:パーキングケーブルカバー
▼家電:キーボードカバーなど
スチレン系エラストマー SBC(TPS) ①耐熱性、耐寒性に優れ、様々な使用環境に耐える。②架橋剤、可塑剤、ハロゲン系難燃剤などの環境負荷物質は含まれない。③熱履歴による劣化が少なく、リサイクル特性に優れる。 ▼自動車:表皮材、メーターフード
▼家電:電線ケーブル被膜、プラグなど
オレフィン系エラストマー TPO ①非架橋、低品質グレードでは強度が低く、圧縮永久歪が大きく、非極性の油、溶剤に膨潤する。また、溶融粘土の温度依存性が小さく、加工時の粘土が高いなどの短所もある。 ▼自動車:内装表皮材、バンパー
▼家電:電線ケーブル被膜、プロテクタ
▼工業製品:工具グリップ
塩化ビニル系エラストマー T-PVC ①セット、熱変形が小さい。②反発弾性が大きい。③耐摩耗性が優れている。④着色が自由で透明製品もつくることができる。 ▼自動車:パッキング類、ブーツ類
▼家電:電線ケーブル被膜材、ホース
▼医療:輸液バッグ

2色成形での熱可塑性樹脂の利用

紹介した硬質樹脂や熱可塑性エラストマーを組み合わせることで、様々な機能性や性質を付与することができます。

 

以下は硬質樹脂とTPEを組み合わせた一例になります。

エラストマー(TPE)でパッキン形状を2色成形し、シール性を付与した事例

(パッキン部分は通常黒色ですが、分かりやすさのため水色に成形したサンプルです)

その他の活用例はこちらこちらでご紹介しています。

また、2色成形をする際には材料の組み合わせにより、溶着しない場合があるため、組み合わせを考慮する必要があります。

2色成形の材料の組み合わせについては、こちらで詳しくご紹介しています。